サイトへ戻る

能登地震「早く漁に出たい」 被災漁港の復旧急ぐ/石川県

2024/06/21 公明新聞7面

2024年6月20日

 海底地盤の隆起など、能登半島地震は石川県内の漁港に大きな被害をもたらした。県や市町は復旧工事を急ピッチで進め、全69漁港のうち約80%の55漁港で水揚げができる状態まで回復した。一方、前例のない隆起に対する復旧の知見がなく、再開の見通しが立たない漁港も。県や市町だけでなく、国が復旧支援に力を入れる。=能登半島地震取材班


 能登半島の先端に位置する狼煙漁港(珠洲市)は、まだ水揚げできない港の一つ。震災前、干潮時で水深約4・5メートルあった海底が地震により1・5メートルほど隆起した。水深が浅くなったせいで船の入港に困難な状態が続く。地元漁師からは「海が離れ、遠くなった」との声が漏れる。

 狼煙漁港は、悪天候時に船が避難する港として国に指定されている。この機能を持つ県内3港の中でも狼煙漁港が最も甚大な被害を受けたことから、管理する県の要請を受けて水産庁が現在、直轄代行でしゅんせつ工事に乗り出している。船が出せるよう、震災前と同じ水深にするためにクレーンで港内の海底の土砂をすくい、取り除いている。

 だが、隆起で岸壁が高くなり船からの水揚げ作業ができないところもあるため、漁業再開の見通しはまだ立たない。漁師の糸矢貞雄さんは、震災から5カ月以上も出漁できず、「早く漁に出たい」と訴える。

■約8割が「水揚げ可」に/前例ない隆起、国が技術支援

 水産庁によると、海底の隆起や岸壁損傷などの被害を受けた漁港は、県内の全69漁港のうち60漁港に上る。管理する県や市町が土のう設置やアスファルト舗装など応急工事を進め、6月15日時点で水揚げできる漁港は一部使用可を含め計55に増えた。

 とはいえ、狼煙漁港をはじめ計14漁港で全く使用できない状態が続く。そのうち、穴水町の2漁港は地震の揺れによる岸壁損傷などの被害が発生。輪島市の舳倉島漁港は、津波により押し流されたがれきなどの被害を受け、現在は応急工事に取りかかっている。

 このほか、珠洲、輪島の両市と志賀町の11漁港では、前例のない海底の隆起が復旧を遅らせている。水産庁の担当者は「過去の震災と違い、復旧方法の知見がないことが課題」と指摘する。

 例えば、輪島市の鹿磯漁港は約4メートル隆起。海底の一部が干上がった状態にどう対応するのか見当が付いていない。

 これに対し、水産庁は、隆起被害を受けた漁港を管理する県や市町に技術支援することを決めた。7月をめどに復旧・復興の道しるべとなるプランを県と市町に提示する予定。このプランを県は、年度内にまとめる復旧・復興の方針に活用する方向だ。

■漁師の声聴き、再開を後押し

 漁業の全面再開に向け、公明党は漁師たちの声を聴き、隆起被害を受けた漁港などの早期復旧を国に求めてきた。

 党「令和6年能登半島地震災害対策本部」の中川宏昌本部長代理(衆院議員)と山崎正恭衆院議員、党県本部の小松実幹事長(県議)は先ごろ、鹿磯漁港の被害状況を視察。中川氏らは「漁業者のなりわい再建に対する不安解消のため、復旧の見通しを早く示すことができるよう後押ししていく」と決意を語っていた。